贈り物

上司から手渡されたのは、包装紙に包まれた一冊の本でした。
2011年の竹尾ペーパーショウをまとめた本。タイトルも『本』。
実は、僕もよく本を贈ります。
大切な人に、何かのタイミングに、それは誕生日だったり旅行中のふとした時だったりするのだけど、「この本とこの人が出会ったら面白そうだなあ」という感じで、内容で選んだり装丁で選んだり(メーワクだと感じてた人、ゴメンナサイ)。
本を贈るというのは、不思議で面白い行為だと思います。
例えば筆記用具や時計であれば、大事なイベントごとの記念品としての力が働きます。もう少し幅を狭めたもの、まな板とか掃除機とか電子デバイスなら、その人が前から欲しがっていたものをリサーチしたもとに。あるいは自作の詩や絵、歌なんて甘酸っぱい贈り物からは想いの丈が…といったように、ある程度贈り物のジャンルから予測がつきます。
しかしながら一転、本は、贈られた側の心を、その本から得られる以上の想像の世界へ運んでくれる品だと思います。
なぜ、この人は私にこの本をくれたのだろう?と考え始めると、際限なく想像の翼を広げることができます。
装丁が自分好みだったのだろうか?気になっていた著者の本?贈り手の好きな著者?今の自分に合ったテーマと思ったのだろうか。あるいは…その本の、そのページのどこかに、あの人が密かに贈りたかった言葉が隠れているのだろうか…
本を読みながらも、本を読んでいない、そんな気持ちにさせてくれるのではないでしょうか。
…まぁ自分は、そこまで深く考えて選んでいるわけではないのですが、いざ贈られた側になると、いろいろと考えちゃいますね。
さて、上司はどんなことを考えてこの『本』を選んだのでしょうか。などと考えてしまうわけです。
竹尾ペーパーショウは、今年、2014年版もすでに出ています。なぜ、2011?
装丁、素晴らしい。でもそれであれば、今年のでもよいはず。今年のは持ってそうだからと昔のを選んだ?自分も(専門ではないですが)本を書いたことがあるので、そこに掛けた?
いろいろな予想をしながら本をぱらぱら捲ると、この本は78人の人間が選んだ本が、78人のエッセイ付きで紹介されているということに気が付きました。
ひょっとしたら、自分の代わりに、あるいは自分の言葉として、78人の言葉を届けようと思ったのではないだろうか。この種の本1冊にこれだけの人数が言葉を寄せているというのは、なかなかないのではないでしょうか。世界は広い。人間は、いろんな目線でいろんなことを考えて、いろんな言葉を発する。さまざまな人の、考えているさまざまなことを、ちゃんと感じ取りなさい、そう言われたような気がしました。
なんて、答えだなんて思わないけど、僕はそう感じ取りました。そう、感じ取ることができる、というのも、本の素敵な魅力なのかもしれません。
こんなことを直接伝えるのはさすがに恥ずかしいので、たぶん読んでるであろう上司に、この記事をもってお礼の言葉とさせて頂きます。